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産業保健情報

調査研究報告

徳島県における産業医活動実態調査(メンタルヘルス対策への取り組みの現状を含む)
1.はじめに
徳島県における産業医活動に関する調査は、平成11年度に実施したところであり、今回の調査研究は、その後の産業医および事業場が抱える労働衛生上の問題点を明らかにするとともに,産業医の活動実態を把握し県内の産業医活動の活性化の一助にする目的で本調査を行った。
2.方法
徳島県内の産業医466名および事業場567社を対象にアンケート用紙を送付し、産業医および各事業場の産業保健担当者に回答を依頼した。
 有効回答件数は、産業医167件、回収率35.8%、および事業場162社、回収率28.6%であった。調査時期は、平成15年11月1日現在の実態について記入を依頼した。
なお、事業場は従業員50人以上の事業場を調査対象とした。現状の解析、および平成11年度の調査結果と比較検討を行った。項目間の関連については、x2検定を行った。
3.結果と考察

Ⅰ.産業医に対するアンケート結果から

1)徳島産業保健総合支援センターについて知っている人86%、地域産業保健センターについて知っている人60%、小規模事業場産業保健支援促進事業について知っている人42%であり、知名度に差が見られる。
産業医活動については、活動している人は55.1%で、活動していない人のうち、産業医活動の希望のある人は7割近くいた。しかし、事業場からの依頼予定は9割近くが「ない」と答えた。また、産業医を選任していない事業場が約20%あった。産業医の活動の場を増やすことや啓蒙活動が必要であると思われる。
 活動している人に対して、動機について「責任を感じた」と産業医活動に熱心さを感じさせる回答もあれば、「単に依頼されたから」とあまり積極的でない回答も4割近く見られた。
現在、産業医として活動している事業場は一人当たり1~2箇所が最も多く、現在より活動する事業場を増やす時間的余裕はない人が多かった。
 活動日数は「年、数回程度」が最も多かった。「殆どない」の15%とあわせると半数を超え、実際に定期的に活動している人は少ないと思われる。週1回程度活動している人も7.6%いるし、月1回程度の人も20.7%いる。活動状況などの情報交換などがあれば、産業医の活動が活発化するのではないかと考えられる。

 業務内容は健診の結果判定が最も多かった。
 また、診察、事後措置が上位にあったことから健診や事後措置に関することが産業医活動の中心になっていると思われる。健康相談・保健指導も高率で行われている。しかし、職場巡視や衛生委員会への出席などは低かった。事業場から相談を受けるときの相談内容については、「快適な職場環境づくり」、「職場の禁煙・分煙について」が上位にあり、近年施行された快適職場づくりの指針、健康増進法などの影響を受けていると考えられる。

 事業場の衛生委員会への出席について、委員会がないと答えた人が30.4%と最も多かった。
 職場巡視などもしたことのない人が44%おり、接点が作られていない。過重労働対策について知っている人は約6割であった。しかし、通達どおりに事業場から時間外労働について情報が得られているかというと、約9割は情報を得られておらず、過重労働に対する健診も行えていない。

 メンタルヘルスに関する相談を受けたことのある産業医は約3割であった。この29.3%を対象に相談内容と対処方法、メンタルヘルスに関する教育について質問した。相談内容は「仕事に集中できない、根気がなくなった、ミスが増えた」51.9%、「頭重感、頭痛、肩こりなど」29.3%、「欠勤が増えた」40.7%が上位であった(複数回答)。対処方法については「管理監督者との話し合い」、「専門医(精神科医や診療内科医)を受診」がともに66.7%で最も多く、ついで「職場内での対処(環境の改善や配置転換など)」、「しばらく休養をとらせた」でともに55.6%であった(複数回答)。メンタルヘルスに関する教育について尋ねたところ、「管理監督者教育を実施した」、「従業員教育を実施した」がそれぞれ37.0%、29.6%と最も多かった一方で「先生自身が、今のところ必要性を感じていない」、「事業者として、今のところ必要性を感じていない」もともに22.2%ずつで高率であった(複数回答)。このことから、メンタルヘルスに関する取り組みは、事業所間で、あるいは産業医間でも格差があることがうかがえる。

 産業医が活動する上でこまっていることがあるか尋ねたところ、自分(先生)自身の知識・経験不足が上位であった。また、特にこまっていることはないと答えた人も同様に上位にあった。

 クロス集計の結果から、衛生委員会に出席したり、職場巡視を熱心に行うなど事業場との関わりを作ろうとしている人ほど、事業場からメンタルヘルスの相談などを受ける割合が高かった。
また、それらの相談を受ける割合は産業医としての経験年数や年齢に関係がみられなかった。

Ⅱ.事業場に対するアンケート結果から

 労働衛生上で問題ないとしているのは21%であり、63%は何らかの問題を抱えていた。
問題の内訳からは、労働衛生上の問題点が作業ないし作業環境上についてよりもヘルスプロモーションに重点をおいている傾向がうかがわれた。

 事業場が答えた産業医の業務は、産業医のアンケート結果と同様に健康診断に関する項目が上位にあった。将来、産業医に業務を希望する項目として救急処置に関する項目が多かった。

 産業医の活動に関して不満足である事業場は17%であった。

 推進センターの支援サービスを利用したい事業場は全体でみると「利用したい」が47.9%、「知っているが利用したことがない」28.9%であった。利用したい項目では、窓口相談・実地相談・事業主セミナー・衛生管理スタッフの研修としてサービスを利用したいと答えた事業場が68社中65社(95.6%)にものぼった(複数回答)。希望する支援サービスの内容は、「職場のストレスとメンタルヘルス」50.0%、「生活習慣病と健康づくり」42.2%が上位であった。以下、「健診の事後措置」29.7%、「労務管理と健康管理」28.1%、「関係法令の解釈」23.4%が続いた(複数回答)。

 メンタルヘルスに関して、産業医に相談したことがあるか尋ねたところ、約20%があると答えた。対処方法については、「専門医受診」、「職場の産業医と面談」が上位であった。メンタルヘルスに関する教育について、教育に関する具体的な方法が分からない事業場が最も多かった。

 事業場・産業医のメンタルヘルスに関する教育に違いがあるかみたところ事業場は「具体的な方法が分からない」事業場が多かった。また、必要性を感じていない事業場も多かった。事業場のニーズに応えられる産業医活動の向上に関して更なる充実を望む。

4.まとめ
以上の結果から、職場における労働者の安全と健康の確保および快適な職場環境の形成のために、産業医活動の活性化や、事業場の安全・衛生管理水準の向上に産業保健推進センターが果たすべき課題は多く、産業医・事業場双方への専門的支援・広報活動が重要であることが示された。


主任研究者 徳島産業保健総合支援センター 所長 中川 利一
共同研究者 徳島産業保健総合支援センター 相談員 広瀬 暉
徳島産業保健総合支援センター 相談員 松森 茂
徳島産業保健総合支援センター 相談員 島 健
徳島産業保健総合支援センター 相談員 斎藤 恵
徳島産業保健総合支援センター 相談員 洲崎 日出一
徳島産業保健総合支援センター 相談員 横田 雅之
徳島産業保健総合支援センター 相談員 西山 敬太郎
徳島産業保健総合支援センター 相談員 鈴木 泰夫



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