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産業保健情報

調査研究報告

徳島県内事業所における健康診断事後措置に関する実態調査
1.はじめに
労働衛生行政では、既に昭和60年代から健康保持増進を強調した施策を推進しており、平成8年より中小規模事業場における勤労者の健康保持増進措置も推進されている。
 そこで、当センターでは、今年度は、健康診断の事後措置の実態を把握し、事後措置として今後指導すべき点は何かを明らかにすることを目的として、従業員50人以上の全事業場について調査を実施した。なお、同時に、従業員50人未満の一定の事業場については、今後の調査の参考とするため、予備調査として実施した。
2.方法

1)調査対象
 徳島県内の従業員50人以上の全事業場586を対象とした。
 なお、併せて、予め選定した従業員50人未満の事業場269を予備調査の対象とした。

2)調査時期
 平成13年10月1日から10月31日にかけて、調査を行った。

3)調査内容
 共同研究者らが、無記名自記式の調査票を作成した。
 調査内容は、事業場の規模・業種、衛生管理者・産業医等の健康管理者の有無、健康診断(以下健診)の
 実施状況および健診の事後措置(以下事後措置)に関する内容についてであり、各項目に多肢選択による
 回答項目を設けた。

4)調査方法
 調査票には、徳島産業保健推進センタ-所長の調査依頼文を添付し、郵送により各事業場へ返信用封筒と
 共に送付した。
 倫理的な対処として、調査票作成時に、事業場の名称を特定する項目を入れないようにした。
 調査票の返送をもって調査に同意されたものと捉えた。

5)分析方法
 事後措置の実態を見るために、従業員の規模別(以下規模別)および産業医の有無別にクロス集計した。
 分析対象とした事業場の規模は、「50人以上」である。統計学的な有意差を見るためにカイ自乗検定を行った。
 集計には統計ソフトSPSS(Ver.11)を使用した。
3.結果および考察

1)対象者の概要

調査票は289ヶ所の事業場から回収された。回収率は49.3%であった。
分析対象の事業場は、業種は多様であるが、製造業に類するものが35.6%を占めていた。最も多い業種は
「商業」で、全体の19.4%(56ケ所)であった。次いで多かったのは、「保健衛生業」で、15.6%(45ケ所)であった。
事業場の規模では、頻度が最も高かったのは50~99人の事業場で、54.7%(158ケ所)であった。
300人以上は11.1%で、32ケ所のみであった。

2)健康管理担当者の有無およびその職種

健康管理担当者が「いる」事業場が大半で、88.9%(257ケ所)であったが、「いない」と回答した事業場も32ケ所(11.1%)みられた。
規模別の比較では、表1に示したように統計学的にも有意な差がみられた(p<0.05)。

表1)健康管理担当者の有無
健康管理担当者50~99人100~299人300人以上総計
1339331257
84.2%93.9%96.9%88.9%
256132
15.8%6.1%3.1%11.1%
総計1589932289
100%100%100%100%
規模別有意差:p<0.05

健康管理担当者の職種は、全体でみると「産業医」が最も多く、産業医が核となり多様な職種と連携して構成されていることが明らかになった。しかし、健康管理担当者として産業医を選択した率は総計で44.3%であり、産業医の選任率(73.2%:徳島労働局、平成13年12月調べ)に比して少なかったことから、事業場ではまだ産業医に対して健康管理担当者としての位置付けを明確にしていないことが窺えた。

表2)健康管理担当者として産業医を選択した率
選択の有無50~99人100~299人300人以上総計
595117127
37.3%52.0%54.8%44.3%
994714160
62.7%48.0%45.2%55.7%
総計1589831287
100%100%100%100%
規模別:p<0.05 (無回答2)

3)事後措置について

定期健診は大半(99.0%)の事業場で実施していたが、「実施していない」および「その他」を回答した事業場が3ケ所あった。

健診結果記録の管理については大半の事業場で管理していた(94.0%)が、有所見者について産業医に意見を求めること(図1)や、必要に応じ就業場所の変更措置等を行うこと(図2)については、健診の事後措置として不十分な実態が明らかになった。

図3には規模別にみた保健指導の実施状況を示した。規模別による差は統計学的にも有意(p<0.01)であった。この結果は、保健指導の担当者には産業医が最も多かったことから、健康管理担当者として産業医を選択したかどうかとも関連すると考えられる。また、事業場の規模が大きい程、多様な職種と連携して保健指導が行なわれていた。




4.まとめ

1)事業場の規模により、健診の事後措置だけでなく健診そのものへの対応にも差があることが明らかになった。

2)健診の事後措置については、産業医を選任しながら産業医の業務を確立していない事業場が約4割近くあることから、産業医の今後の課題として、産業医の職務の遂行、事業主並びに産業医双方によるより充実した実質的な産業医活動の推進が望まれる。

3)産業医や衛生管理者の選任が義務付けられている事業場においても、、健診結果に基く適切な事後措置や重要な保健指導が実施されていない事業場があることも明らかになり、今後の指導体制の整備が必要である。

4)勤労者の健康管理におけるプライバシーを配慮し た対応は、本来、実施率100%であることが望まれるものであり、改善が急務であることが示唆された。その一つとして、健診結果の管理体制の整備や通知方法において個人票をコピーすることの是非等の検討が必要と思われる。

5)しかし、各事業場における事後措置に対する自己 評価は高く、最大限の努力が払われていることを反映しているとも考えられるが、先行研究(愛知県)との比較からみても課題も多々あり、改善につながる現状認識が必要と思われた。

6)最後に、事業場から産業保健推進センター等への 期待が低いことから、地域のニーズに応え得るサービスの充実を図る必要があると思われた。



主任研究者 徳島産業保健総合支援センター 所長 七條 茂文
共同研究者 徳島産業保健総合支援センター 相談員 多田 敏子
徳島産業保健総合支援センター 相談員 広瀬 暉
徳島産業保健総合支援センター 相談員 鈴木 泰夫
徳島産業保健総合支援センター 相談員 横田 雅之
徳島県医師会産業医部会部会長 中川 利一
徳島県医師会産業医部会理事 大木 裕子



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